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特別史跡百済寺跡の築地復元整備

当社が設計・監理を行った特別史跡百済寺跡の築地塀復元整備工事が完了しました。

百済寺跡は、奈良時代後半に百済の王族の末裔一族が氏寺として建立したと考えられている寺院跡で、創建当時の主要堂塔の土壇等が良好に遺存する数少ない遺跡であり、古代日朝文化交流の史実をあらわす価値の高い史跡であるとして、昭和16年(1941)に国史跡に、昭和27年に特別史跡に指定されました。特別史跡は日本全国で62ヵ所、大阪府では大阪城跡と百済寺跡の2か所しかありません。

特別史跡百済城跡では、昭和と平成に行われた発掘調査から、南門・中門・金堂・講堂・北方建物(食堂)・北門が中軸線上に並び、中門から発した回廊が金堂に取りつき、回廊内に東西に2つの塔が並ぶという建物配置、また寺の範囲が約140m四方で築地塀を廻らせ、中央の堂塔院・僧院のほか少なくとも4区画が存在したことが明らかになりました。

再整備基本計画に基づいて、平成27年度から本格的な再整備工事に着手し、令和元年度には堂塔院などの中心建物の基壇表現がほぼ完成しました。そして今回は令和4年10月より令和5年度にかけて築地塀の南門東側から東門南側までの南東角部約112m(簡略工法)、および東門北側の一部約6m(在来工法)の復元工事を実施しました。

上部躯体構造が未詳の為、発掘調査結果を基に築地基底部の幅を決定し、古文書や同時代の類例を参考に分析を行い規模や形態、部材の寸法についての検討を重ねて設計を行いました。史跡内に歴史的建造物を復元するには、文化庁の専門分科会の一つである「史跡等における歴史的建造物復元の取扱いに関する専門委員会」に諮り了承をもらう必要があります。築地塀の復元設計は、この委員会で計 6 回の審議を経て、足掛け約2年半をかけて了承を得ました。

工事においては、復元築地の一部は往時と同様の版築工法を用いての復元とするため、材料や施工法、工期を十分検討しています。また、瓦は出土した遺物を実測し、瓦当の紋様も含め同等の寸法、形状に作成して復元しました。軒平、軒丸瓦で各約850枚、平瓦、丸瓦でそれぞれ約2600枚を手造りし焼成しました。

版築工法では、約10㎝の厚さで撒きだした土を6㎝ほどまで搗き固めることを繰り返します。版築躯体部の高さは2.2mあり、33層を積み重ねています。各層で表面硬度の測定を行い十分な強度が確保されたことを確認して工事を進めました。創建時の工法と同様に機械を用いることなく、すべて人力で土の巻き出しから搗き固めまでを行いました。その成果が躯体の表情として見て取れるかと思います。

令和6年4月8日に「特別史跡百済寺跡築地塀完成記念式典」が執り行われ工事は無事完了しました。特別史跡の一部を復元という形で可視化できたことは、関係者の思いの結晶だと思います。この場所を訪れた方々が往時の百済寺の姿を想像することのお手伝いが、ほんの少しでも、できると良いと思っています。

在来工法による築地塀(南西見る)
簡略工法による築地塀(全景、北から見る)
1:版築作業の様子 2:軒丸瓦作成の様子(焼成前) 3:在来工法の土居葺き

【枚方市HP-「百済寺跡築地塀整備工事 進捗状況」】
https://www.city.hirakata.osaka.jp/0000048124.html

【ひらかた文化財だより】
https://www.city.hirakata.osaka.jp/cmsfiles/contents/0000024/24529/dayori138.pdf

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