お知らせ

菅谷たたら山内修理事業

雪害で建物が破損したことをきっかけに、平成25年よりにすべての指定建物で解体を伴う修理を順次おこなってきましたが、このたび完了し、フルオープンとなりました。
弊社はこの修理工事に設計監理の立場で携わっています。

島根県雲南市にある「菅谷たたら山内(すがやたたらさんない)」は、全国で唯一「たたら場」が現存し、ジブリ映画「もののけ姫」のモデルになったといわれています。山内とは日本古来の製鉄法であるたたら製鉄の従事者が日々働き、生活していた集落の総称で、施設の中心となる「高殿(たかどの)」をはじめ、職人達が生活した長屋などがあります。菅谷が操業を停止したのは大正10年で、一部改変されるものの、その多くが現存します。
菅谷たたら山内は「有形民俗文化財」で、その中には高殿脇の「桂の木」も指定されています。この巨木は製鉄の神とされる金屋子神が降臨する依代とされ、樹木としては珍しい民俗文化財として大切にされています。また春先の数日間だけたたらの炎を連想させるかのごとく真っ赤に芽吹き、幻想的な姿をみせてくれます。

修理を通じて大切にしていることは、一つは山内の建物群にみられる特徴的な仕様の継承です。例えば、屋根はこけら葺きでは珍しく中国山地で豊富に入手できた栗材が使われ、山内の独特な景観を生み出しています。また土壁の下地には、竹の育たない寒冷地以外では珍しい細い枝(粗朶(そだ))が使われます。たたら操業では大量の木炭用木材が必要であり、その副産物である粗朶を壁下地に利用した、とも想像されます。
二つ目は生産システムの観点での全体性を伝えることです。つまり菅谷たたら周辺の山中には、砂鉄を採取するため選鉱場、そして操業に必要な動力を供給した川の水利、また木炭や建材を供給した山林が山内を取り囲みます。それらは自然と密接に関係した「近世における産業遺産」の風景といえるもので、全体性をもった保存と活用の視点が菅谷たたら山内の価値をより高めると考えています。

写真はフルオープン記念イベントの様子ですが、以前にインスタグラムでも紹介しています。
修理作業中の写真もありますので、そちらもご覧ください。
https://www.instagram.com/b_hozon_keikaku/

菅谷たたら山内(中央が「桂の木」、その右が「高殿」)
高殿の中でのコンサート
建物見学の様子

【雲南市HP】https://www.city.unnan.shimane.jp/unnan/kankou/spot/iseki/musium08.html