お知らせ

皆乗寺の災害復旧

平成28年(2016)熊本地震で被災した皆乗寺の本堂と山門の災害復旧事業が完了しました。当社は設計監理に関わりました。

浄土真宗大谷派皆乗寺の本堂と山門は、文化12年(1815)~文政5年(1822)にかけて建立されたもので、この地域特有の目板桟瓦葺きの屋根や内部の彫刻を多く用いた装飾など、文化年間の熊本藩の庶民の気風をよく示す建物です。
被災時は未指定であったため、財政的支援を受けるあてがなく、公費解体し新たなお堂を建てる計画もありました。しかし被災した未指定文化財の多くが失われていくのを危惧した専門家らによって緊急調査が行われ、益城町の教育委員会と文化財保護委員の協力のもと、町の指定重要文化財として指定され、熊本県や益城町から財政的支援を受けて保存修理し残すことが可能になりました。

災害復旧事業では、地震により傾いた柱の建て起こしや根合せ、地震後の雨漏りで腐朽した部材の取替え、倒壊してしまった向拝の復原などを行いました。修理の際には、建物のオーセンティシティを最大限守ることを心掛け、当初材を可能な限り残す努力をしました。また、今後の災害に備え、建物の弱点である錣葺の小屋組や向拝廻りを補強するとともに耐力壁を設け、耐震補強を行いました。さらに修景整備として、この地域特有の目板桟瓦を復原し、アルミサッシに置き換わっていた外部廻りを古写真をもとにすべて木製建具に戻すことで、創建時の雰囲気を取り戻しました。

これからも皆乗寺が地域の宝として愛され、活用されていくことを願っています。

皆乗寺災害復旧 落慶法要の様子
落慶法要の様子
皆乗寺 竣工 内観
竣工 内観
竣工 外観
皆乗寺 修理前 外観
修理前 外観