去る5月31日、当協会が災害復旧事業に携わった熊本県大津町の国指定重要文化財「江藤家住宅」において、「全国重文民家の集い」の見学会が開催されました。同会は、重要文化財に指定された民家を所有する方々からなる団体です。
江藤家住宅は、平成28年に発生した熊本地震で甚大な被害に見舞われましたが、長年の歳月をかけて見事に復興を遂げました。九州で初めての開催となった今回の集いでは、一般見学会もあわせて行われました。
【「BUILD BACK BETTER(より良い復興)」を目指した江藤家住宅の再生】
当協会では、江藤家住宅の保存修理をはじめ、耐震補強や防災設備の設計、さらには復旧後の公開に向けた展示空間や外構の整備まで、トータルで設計・監理を担当いたしました。
今回の見学会では、江藤様ご家族が今後も快適にお過ごしいただけるよう工夫した生活空間を、特別に公開していただきました。歴史ある近世民家の風格を大切に守りながらも、床暖房や断熱材の施工による温熱環境の改善、現代的なキッチンの導入(※自費整備)など、現代の暮らしに合わせたアップデートを施しています。ご参加いただいた皆様からは、「重要文化財でもこんな工夫ができるんだ」と驚きの声があがり、文化財を「守り、活かす」ことへの新たな希望を感じていただける有意義な時間となりました。
江藤家住宅の復旧事業の根底にあるのは、「BUILD BACK BETTER(ビルド・バック・ベター)」という想いです。これは災害からの復興において、単に元の状態へ戻すのではなく、教訓を活かしてより強く豊かな地域社会を再建しようという国際的な防災の概念です。
この理念のもと、今回の復旧・復興をスムーズに進めるための大きな鍵となったのが、過去に当協会で策定した「保存活用計画」でした。建物の修理方針から公開・活用の設計に至るまで、この計画書が確かな指針となったことで、歴史的価値の継承と今の時代に合った暮らしやすさを両立しつつ、展示空間の整備など『地域に開かれ、ともに支え合える文化財』としての新たな形を実現できたと考えています。
